たった一人になってしまった傘職人の技術を後世に。”しゃんしゃん”の音を未来へ響かせる取り組みがスタート【鳥取しゃんしゃん祭】

ごきげんよう。しばちゃんです。

夏と言えばお祭りですね。
鳥取にはギネス記録を持つ夏祭りがあります!
それが「鳥取しゃんしゃん祭」です。

華やかなお祭りの縁の下の力持ちのような方にお話を伺ってきました。

目次

鳥取しゃんしゃん祭とは?

©鳥取しゃんしゃん祭振興会

昭和40年から鳥取市で続く夏祭り「鳥取しゃんしゃん祭」。

鳥取県東部の伝統芸能である因幡の傘踊りを誰でも踊りやすくアレンジした華やかな傘踊りで、”しゃんしゃん”の由来は鳥取の温泉地で湯が沸く表現と傘の鈴の音が鳴ることによるものです。

©鳥取しゃんしゃん祭振興会

ちなみに、ギネス記録では、同時に傘踊りをする人数に挑戦していて、1688人という記録で世界最大の傘踊りの称号を手にしました!!

”ご当地マンホール”
蓋に描かれたお祭りに必須のアイテム!

鳥取市内のマンホール。
蓋のデザインは鳥取しゃんしゃん祭りで使われているしゃんしゃん傘です。
地域でいかに親しまれているお祭りかが伝わってきます。

この祭りに欠かせない「しゃんしゃん傘」。
竹製の和傘で、職人の手によって一つ一つ手作りされています。

しゃんしゃん傘作りを一手に担う「竹扇堂(ちくせんどう)」

しゃんしゃん傘の制作を一手に担うのが、鳥取市内にある竹扇堂。

竹扇堂代表の株本覚(かぶもと さとる)さん。
お父さまやおじいさまの影響で23歳から傘づくりをスタート。
小さい頃から傘づくりを見てきたことで、難しい作業をこなす感覚が自然と身についていたそうです。
3代目として傘をつくり続けています。

株本さんとベテラン職人のお二人で年間約1300本もの傘を、一つ一つ手作り。
しかし職人さんが高齢化を理由に退職し、傘を一から組み立て完成させることができるのは、代表である株本さんお一人、という状況になっていました。

新たな傘作りの担い手を

このままでは、しゃんしゃん祭に欠かせない「傘」が将来なくなってしまうかも…。

株本さんの技術を後世に伝えるため、2024年に新たな傘作りの担い手を募集。現在、2人のお弟子さんが研修を続けています。

2024年9月から傘作りを習い始めた田中淳子さんさん。
傘の作り手不足によってお祭りが続かなくなることを心配して、この世界に飛び込んだそうです。

田中さんはガラスアートの作家さんで、繊細な竹に和紙を美しく貼り付ける手先の器用さが印象的でした。
今後の目標は傘の修理つくるスピードを上げること
和紙をはがしたり、その部分にまた和紙を貼ったりと修理は作る以上に難しいそう。

そして2025年4月から新たに加わった山本雅紀さんは現役の踊り手でもあります。

目標は傘づくりの光景を多くの人に知ってもらうこと
実際に作る側になると、こんなにも手の込んだ作業が行われていることを知り、傘を大切に扱うことへの気持ちがより増したとお話しされていました。

みなさんに共通する傘づくりの喜びは「綺麗にできたとき」や「お祭りで自分が作った傘で楽しそうに踊る人の姿を見たとき」だそうです。

傘づくりの様子

傘づくりは株本さんが山で竹を取ってくるところから始まります!!

傘の内枠の部分を作成中。
竹を割らないよう細心の注意を払いながら小さな針で糸を通します。
強度を増すために複数本の糸を重ねて通すことが難しいそうです。

内枠が完成。
竹と竹の間が均一で正確さもあり、手仕事ならではの繊細さが感じられます。

完成した内枠に少しずつ丁寧に和紙を貼りつけます。
鳥取で1300年以上続く青谷(あおや)和紙を使っています。

激しい踊りに耐えられる傘づくりのポイントは傘の中心の「」と「」の部分。
出来栄えの良い傘の見分け方は「頭どめ」の部分で判断するそう。
赤や青などの色は和紙に直接色付けをして完成させます。

ベースが完成したばかりの傘。
作る過程を知ると傘を丁寧に扱おうという気持ちが自然と湧いてきますね。

田中さんも山本さんも踊り手の笑顔のために、ひとつひとつに心を込めて作っていました。

傘のバトンを後世へ渡していく

当面の間は3人で協力して傘づくりに励んでいくとお話しされていました。
新しい傘の製作のみならず、修理の依頼も多くあり、その膨大な作業の担い手が増えることは、お祭りを未来へつなげていくために欠かせないことだと感じました。

代表の株本さんはしゃんしゃん祭りはもちろん、因幡の傘踊りも広まっていくことを願っていました。
お祭りとともに、傘づくりも次の世代へのバトンがつながれていきます。

鳥取しゃんしゃん祭情報

2025年 鳥取しゃんしゃん祭
【開催日】
8月13日(水)前夜祭
8月14日(木)一斉傘踊り
8月15日(金)市民納涼花火大会
【会場】
JR鳥取駅周辺~中心市街地、千代河原市民スポーツ広場(花火大会)

詳しくは「鳥取しゃんしゃん祭公式HP」

na-naでは、【特設ページ「つなげ、ふるさとの音」】で、鳥取しゃんしゃん祭を次世代につなぐ取り組みや人々を紹介しています!

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この記事を書いた人

しばちゃんのアバター しばちゃん CA・na-naライター

神奈川県出身。趣味は読書と植物鑑賞。
CAとして働きながら、鳥取に移住しna-naライターを兼業しています。
日本文化に興味があり、歴史的な背景が残っている山陰から再発見・発信していきます。

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