明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!
私が神主を務めるロサンゼルスのアメリカ出世稲荷神社は、まだ社殿がない(現在、社殿創建に向けて奉賛募集中です!よろしくお願いします! https://shintoinari.org/get-involved/projects-building/)。そこで、毎年、元日は日系商工会議所主催の「お正月in リトル東京」に神社ブースを出して、地元の方々が初詣できるようにしている。いわゆる「ポップアップ神社」だ。
近年、アメリカでは、この「ポップアップ〇〇」が流行っている。日時と場所を決めて、一時的に営業を行う形態だ。独立したシェフが店舗を構えるまで、エアービーアンドビーなどで場所を借りて、期間限定で予約のみで腕前をふるったり、ファッション・ブランドが新しいラインナップの宣伝・販売に使ったりしている。
アメリカ出世稲荷神社も社殿がない代わりに、ポップアップで神事を行っている。
神社の業務は意外に多い。特に年末年始は多忙を極める。
大晦日の年越の大祓と除夜祭、元日の歳旦祭、月次祭に加えて、熊手や破魔矢などの縁起物や神札、お守り、絵馬などの授与品の頒布準備、ボランティアの募集とシフトのやり繰りがある。社殿があってもてんてこ舞いだが、ブースを出すとなると、神事の道具と授与品の荷造り、搬入、搬出、荷ほどきという追加の作業が加わる。
毎年、そうした作業のほとんどを一人でこなしてきたが限界がきていた。寄る年波もだが(笑)、お陰様でアメリカ出世稲荷神社もファン(崇敬者)が増え、「神道稲荷会」の会員数も年越の大祓のご祈祷依頼も右肩上がりなのだ。
神道稲荷会のVIP会員には直会セットを送っている。日本のように直会セットを販売している業者はアメリカにはない。食品なので日本からの輸入も難しい。ということで、直会セットは手作り!!
御洗米と約2センチ角に切った昆布を、それぞれ真空パックにする。塩は折り紙に入れて、ヒートシーラーで封をしてステッカーを貼る。
12月は映画記者にとっても多忙極める月。映画賞狙いの作品が次々と封切られる。賞狙いの映画の上映時間は2時間半を超えるものが多い! コロナの前は公開前に記者会見やレッドカーペットの取材もあったが、最近は縮小気味なのでほとんどないのがある意味幸い。
しかし、投票のためにそうした映画も見て、〆切もこなし、社務所ワークとなると、「どげすーだ!」という状態……。〆切のいくつかは「ごめんなさい」して、燃えて作業して間に合うかっ? と思っていたところに救世主(!)が現れた。
秋祭りにも大活躍してくれた、スカイ・ペーシャさんだ。卒論に神道を選んだ彼女が、12月の半ばから手伝いに来てくれることになった。
「巫女さんになるのが子供の頃からの夢でした」という彼女は小学校時代の3年間を山口県で過ごした時の経験から神道に興味を持つようになったという。
「お正月に巫女の装束を着たいなら、巫女の修行をしてください」として、巫女の業務である社務所ワークを手伝ってもらった。
大学のルームメイトの実家から往復2時間以上かけて通ったスカイさんは、バスに乗っている間も直会セットの袋の用意をするなど、がんばった。
7日間の修行のご褒美(?)として、6日目には装束の着付けとたたみ方を伝授。7日目には自分で着脱と収納ができるよう練習してもらった。
スカイさんと入れ替わりで、大学生のダコタ・スミスさんが来て、元日のポップアップ神社ブースに持って行く授与品の仕分けを手伝ってくれた。
大晦日には、社会人のタッカー・ズラウスキさんが午前中に到着。人形と形代の整理を手伝ってくれた。午後は、いよいよ搬入。アメリカ出世稲荷神社のビデオ・プロダクション・ディレクターとして大活躍の涼風空さんが婚約者のユキさんを同伴してLA入り。ユキはアニメショップ勤務経験があるので、お会計関連の作業を完全に任せることができてとても助かっている。
小雨の中の搬入も3人のボランティアの力を借りて予定より早く終わり、ピザで夕食を早々に済ませて、分祠兼社務所兼自宅に戻って、年越の大祓・除夜祭!
狭いワンルームに祭壇を組み、3人の参列者でYouTubeライブ中継の神事が始まる直前、土砂降りの中、クリスマスで帰省していたスカイさんが到着した。
1月1日は午前8時過ぎに現場入り。前日の暴風雨でテントが吹き飛ばされていたハプニングも乗り越え設営開始。
年末にボランティアにはズームでオリエンテーションをしていたが、初参加者は何をしていいやら……な状態。毎回、神社を手伝ってくれている超強力ボランティアの牧野康代さんに加え、昨年も手伝ってくれたエマ・ウィッシュさんが、いろいろと覚えていてくれて、授与品テントの設営を任せることができた。
祭壇テントは、竹の鳥居を組み立てたり、賽銭箱を出したりと力仕事が多いので、男性ボランティアをメインに「あれ持って来て」「これを開けて出して」と指示しながら祭壇を組んでいった。
「お正月in リトル東京」は10時50分からだが、神社ブースには例年同様10時頃からすでに人が並び始めた。
昼頃には20人近くの長蛇の列となり、授与品係のボランティアは大忙しとなった。
今回、急遽、日本人の大学生の宮本裕貴さんと山本昂男さんが手伝いに来てくれてもの凄く助かった。なぜなら、彼らは日本語が読める!! 人生で一度でもお祭りを見たことがある!! 牧野さんと彼ら以外は全員、アメリカ人なので、お祭りが何なのかさっぱり……な人たちだ。それでもボランティアを立候補してくれてとても嬉しい。アメリカ人ボランティアは、神道に興味を持つ高校生や大学生、社会人など、年齢も職業も様々。中には、映画監督・プロデューサーがいるのがロサンゼルスらしい。
オリエンテーションやメールで「お守りや縁起物の名称と外見が一致するよう予習をお願いします」と伝えていたが、それでも同じ色の、例えば「安産」と「旅行」を混同してしまう人がいたので、今回は、アイテムに番号を振った。まるでファストフードの注文みたいだが、これがかなり使える。日本語が読めないというだけでなく、縁起物をこれまで見たことないボランティアもいるからだ。
コロナの前は、日本の神社のように授与品の現物をテーブルに並べて、参拝者は望みのアイテムをそこから取ってスタッフに渡すという方式だった。しかし、それだと、日本語が読めないために間違った場所に戻す人が続出で、希望と違うお守りをそのまま授かる人も多かった。そこで、コロナも鑑みて、昨年は見本のみを出して、参拝者は希望のアイテムを注文票に記入し、神社ボランティアが現物を出して、会計窓口で初穂料を納めた後に確認して渡すという方式にした。
ブースでは歳旦祭と月次祭をしたが、日本人は誰1人として参列に興味を示すどころか、「あ、何かやってるよ〜! 白いの振ってる〜っ!」と大声でブースの前を横切る人もいた。アメリカ人の多くが神妙な顔をして横切るのに……。
3時半にブースを閉め、大急ぎで片付けに。日没が5時前だからそれまでに全てを終わらせないと暗くて作業ができない。
片付け班ボランティアとして、長年の友人でパラマウント映画のマーケティング部長だったマーティン・ブライスさんが、奥さんのナディさん、息子のジュリアンさん、娘のエイドリアンさんを同伴して来てくれた。ニュージーランド出身のマーティンさんとイラン出身のナディさんは「この作業終わったよ。次は何するの?」と言って、もの凄い勢いでテキパキと片付けてくれた。
今年の元日は、途中で「禊ぎ」の雨に降られたが、全員、無事にポップアップ神社のボランティア作業を終えた。
終日&午後の部ボランティアの面々。写真向かって左からアニー・シューさん、山本昂男さん、山本さんが呼んでくれたベンさん、映画作家のカイ・チャンドラさん、スカイ・ペーシャさん、タッカー・ズラウスキさん、私、宮本裕貴さん、牧野康代さん、涼風空さん、ジェイミー・ヒューズさん、涼風ユキさん
雨に濡れたために、賽銭箱や幟を狭い部屋で干したが、テントの壁はさすがに無理。5日に前述のマーティンの家にお邪魔して作業した。片付け、発送業務はまだまだ続く、どこまでも……。
アメリカ出世稲荷神社の崇敬者はLA在住者以外が圧倒的に多い。年末年始に来た授与品リクエストの対応もかなり遅延している。ひと休みできる日は遠いが、元日にボランティアをしてくれた高校生のジェイミー・ヒューズさんが、スカイさん同様「巫女さんになるのが夢なんです」と言っていたので、来週末から手伝いに来てもらうことになっている。助かった〜。