アカデミー賞の候補が発表され、いよいよ映画賞レースも後半に突入した。
私は映画賞を贈る3つの団体に所属しているので、毎年、賞レースが始まる時期に続々とFYCのDVDスクリーナーが送られてくる。
FYCとは、For Your Considerationの略で、「(候補)の参考に」というような意味。つまりは、「ぜひ、投票してごしない(下さい)」ということだ。
また、DVDスクリーナーだけではない。FYC用のスクリーニング(試写)の招待も来る。来ない作品は、それぞれの映画会社の専用のサイトに行って、スクリーニングの予約をしたり、スクリーナーのリンクをリクエストしたりする。近年は配信会社の作品も賞レースに食い込むようになったので、そうした配信会社は投票者にスクリーナー用のコードを送ったりするのだが、ケチなディズニーなどは「自分で契約して観て下さい」という返事だったりする。
FYCのキャンペーン時期はホリデーシーズンと重なるので、プレゼントと共に送られて来たこともあった。
近年は、賄賂問題や映画会社の予算削減等もあったり、私自身、神主業務が多忙でハリウッドの方に力を入れられなかったりしたため、いわゆる「プレゼント」というものは送られてこなくなったけど……。ちなみに、DVDの前は、VHSテープだった。送料や制作費を考えるとDVDの方が格段に安い。そして、リンクや配信となるとスクリーナーの必要経費はほとんどかからない。
ということで、今号はそんなFYCのDVDスクリーナーやFYCで送られて来た「貢ぎ物」を紹介しよう。
NEONは、毎年、凝ったデザインのボックスセットを送ってきてくれる。
今年は、Triangle of Sadnessがアカデミー賞作品賞にノミネートされているNeon。
会社を設立した2017年に『イングリッド-ネットストーカーの女-』 『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』で賞レースに参戦。2年後の『パラサイト 半地下の家族』は、記憶に新しいようにアカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門を制覇するという快挙を成し遂げた。
エッジの効いた作品を多く世に送り出してきた同社は、他社が止めてしまった「DVDセットを送る」ということで投票権を持つ人に上手にアピールしていると思う。特に平均年齢が高い、ゴールデングローブ賞やアカデミー賞の投票権を持つ人は、高齢過ぎて自分で車を運転できなかったり、ITに弱いために配信のやり方やApple TVなどを使ってパソコンとテレビの画面共有機能ができない人が多かったりするので、マシンに入れればすぐ観れるDVDは重宝される。保守的な彼らが普段、わざわざ観ないような作品をDVDで送れば、観てくれる可能性は非常に高まるワケだ。
各社のDVDスクリーナーには、映画会社側が候補入りを希望する作品名や人名とカテゴリーを明記している。
写真向かって中央上から時計回りに、『Tar/ター』『NOPE/ノープ』『She Said/シー・セッド その名を暴け』『エルヴィス』『アーマゲドン・タイム』『The Batman-ザ・マットマン-』。『NOPE/ノープ』はブルーレイが送られきた。
写真集付きで来た『おやすみ オポチュニティ』のスクリーナー。
2021年のアカデミー賞で長編アニメ賞候補となった『ウルフウォーカー』は、作品に携わったアニメーターたちのお絵かき教室を開催し、教室参加希望者にスケッチブックと色鉛筆のセットが送られて来た。
2013年の映画『クルードさんちのはじめての冒険』は、カップケーキ(!)が同封されていた。
ドリームワークスはプレゼントが好きだったようで、ある年には、代表作のキャラクターとタイトルが印刷されたラッピングペーパーのセットが送られて来たことも……
次号か次々号でオスカーに湧くロサンゼルスと予想を書こうと思う。お楽しみに〜。