近代日本画3巨匠のひとり、川端龍子展が開催。メッセージ性の強い迫力満点の作品が一挙に!|島根県立美術館

島根県松江市にある島根県立美術館で開催中の展覧会「誕生140周年 川端龍子展」をご紹介します!

目次

企画展 誕生140周年 川端龍子展

近代日本画3巨匠のひとりに数えられる日本画家・川端龍子(かわばたりゅうし)。
画家を目指すきっかけとなったのは学生時代に挿絵の公募展で入選したことでした。
画家となってからも表紙絵や挿絵の作品を多く残しています。

龍子の作品は、その背景などメッセージ性を持つものも多く、単に「美しい」だけではない奥深い魅力を感じます!
大画面の屛風画など構図の大胆さや鮮やかな色彩が特徴の作品を次々と生み出し、多くの観衆を魅了してきました。

展示内容

会場には、川端龍子の初期から晩年までの61の作品や資料が展示されていますが、その一部をご紹介していきます!

ChapterⅠ:昇太郎、龍になる!

花鳥双六 星野水裏案/川端龍子画(『少女の友』第10巻第1号付録
大正6年1月 大田区立龍子記念館蔵

画家となった当時、少年少女向けの本の表紙や挿絵を多く描いており、中でも付録に双六が付く正月号は大人気で、子どもがワクワクするようなデザインが得意だった龍子も毎回趣向を凝らし双六絵を描いていたそうです。
四季折々の草花と鳥たちが描かれており、少女たちがこれを囲み楽しんだであろう姿が思い浮かびます。

川端龍子《土》大正8年
大田区立龍子記念館蔵

日本美術院同人となった2年後に発表された作品で、伸び上がる麦を表現するために大量の金泥を用いており、根元のヒバリの巣の部分との光と影のコントラストが絶妙に描かれています。
「金を輝かしい黄色として使った」と龍子は話していますが、この金色を積極的に使っている作品はほかにも多く見受けられます。

画面の上がアーチ型になっているのも独特で、フレスコ画の影響を受けたのではともいわれているそうです。
龍子ならではの新しい独自の発想だったんでしょうね。

ChapterⅡ:新風を巻き起こす、龍!

川端龍子《草の実》昭和6年
大田区立龍子記念館蔵

日本美術院内で認められ徐々にスケールの大きな作品へと深化する中、「床の間芸術」を美徳としてきた院の気風に反発し「青龍社」を立ち上げ、「会場芸術」として広く大衆を魅了する豪快な作品を次々と制作していきます。

これは龍子の自宅近くの雑草を描いたそうですが、六曲一双で横21mにもなる大きさです。
濃紺の画面に金やプラチナを駆使して葉や茎など細かな部分まで繊細に描かれており、植物の命の輝きや草むらの広がりを感じる作品です。

これはもはや雑草とは言えない、美しすぎる“雑草”です!

川端龍子《香炉峰》昭和14年
大田区立龍子記念館蔵

横幅7m、ここまで大きく戦闘機を描いた作品は他にないかもしれません。

時代は日中戦争時、機上の操縦士は龍子自身と考えられ、機体は本来ならばあり得ないスケルトン!
中国・香炉峰の大景観を透かし描いており、大陸を制圧した高揚感や疾風のごとく駆け抜けていくスピード感と共に龍子の興奮が伝わってきます!

川端龍子《爆弾散華》昭和20年
大田区立龍子記念館蔵

ChapterⅡの最後、キラキラした美しい作品が目に飛び込んできます。

実はこれは昭和20年終戦時、龍子の自宅が爆撃を受け壊滅的な被害を受けながらも九死に一生を得た時に制作されたとのこと。

自家栽培していたとカボチャやトマトが爆風で飛び散ってしまう瞬間がストップモーションのように描き出されています。
閃光や爆風のすさまじさが金箔や金砂子で描かれ最初は美しさだけが目に留まりますが、戦争は何も生み出さないという虚しさ、そして「散華」というタイトルからも戦争で亡くなった方への追悼の意味も込められたのではと言われています。

ChapterⅢ:舞い上がる、龍!

戦争は終わるも次々に家族を失い心に深い傷を抱えた龍子。

しかし絵画への情熱は消えることなく世相を反映した作品を発表していったそうです。
霊場や奥の細道を自ら歩きその体験をもとに作品を描くなどを経て、晩年は豪快な筆さばきに軽妙さと柔和さが加わり、深い精神性を兼ね備えた作品を生み出していったそうです。

川端龍子《百子図》昭和24年
大田区立龍子記念館蔵

戦時下、動物園の多くの動物が殺処分されましたが、「象を見たい」という子どもたちの願いに応えインドから象が贈られました。
芝浦から上野動物園まで大勢の人に囲まれながら象は行進したそうです。

戦争が終わりやっと笑顔が戻る子どもたち、そんな子どもへ向けられる龍子の優しいまなざしを感じられ、ほのぼのとしたあったかい気持ちになります。

川端龍子《龍子垣》昭和36年
大田区立龍子記念館蔵

龍子が第三の故郷として愛した伊豆・修善寺に、妻の療養のためにと自らデザインし家と竹垣を建てたそうです。
しかし完成を見ることなく奥様は亡くなられてしまったとのこと。

この作品にも金色がふんだんに使われ、ダイナミックな竹垣と四季それぞれの花や鳥が描かれ美しい1枚となっています。

奥様が元気になってこの家で一緒に過ごし、この庭を一緒に見たかったんだろうなあと龍子の奥様へのあたたかい愛情を感じられる作品です。

川端龍子《逆説・生々流転》昭和34年
大田区立龍子記念館蔵

今回の企画展は2階の展示室にも続いています。

最後はこちらの作品、なんと横幅28mもあるんです!まるで巻物のようです!

グアムで発生した台風が時期に日本を直撃し河川の氾濫や家屋の倒壊など大災害をもたらしていく様子が描かれていますが、それで終わりではありません。
その続きは懸命に復興にあたる人々の姿や少しずつ街が戻ってくる様子を描き未来への希望を表していて、自然の持つ恐ろしさと人間のもつ力強さを描いているといわれています。
まさに28mの物語になっているんです!

災害の様子も描かれているとはいえ、水彩画のような軽やかなタッチで全体は生き生きとテンポよく進む魅力的な作品です。

企画展は2025年8月25日まで開催中。
ぜひ会場を訪れて、本物の迫力を間近で味わってみてください!

開催情報

誕生140周年 川端龍子展
会場:島根県立美術館
住所:島根県松江市袖師町1-5
開催期間:2025年7月18日~2025年8月25日
開館時間:10:00~日没後30分(展示室への入場は日没時刻まで)
休館日:火曜日
電話番号:0852-55-4700
観覧料(当日券):一般1450円、大学生1100円、小中高生500円
<HP>

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