こんにちは。
インテリアコーディネーターのアダチツヨシです。
まだまだ家の中で過ごす時間が長いこの季節。
見慣れた部屋の景色にも、何となくの不満が大きくなってくる頃でもあります。

部屋は整っているはずなのに、どこか落ち着かない。
特別散らかってるわけでもなく、家具が古いわけでもない。
一見問題がなさそうに見える分、どんどん悩みは深まるばかり。
こうした違和感に、言葉と具体例でそっと輪郭を与えてくれる。
今回はそんな一冊をご紹介します。
今あるもので「あか抜けた」部屋になる。

『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。』(2019年)
著:荒井詩万
発行:サンクチュアリ出版
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インテリアの悩みは、「センス」の問題ではない

私がインテリアの仕事に20年近く携わってきた中でとても多いのが、
「センスがなくて……」というご相談です。
そんなときお伝えするのが、「センスよりもコツを知ることの大切さ」のお話です。
悩みの根っこにあるのは感覚の欠如ではなく、判断の拠りどころが曖昧なままになっていることがほとんどなのです。
本書『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。』は、その曖昧さに対して感覚論だけではない“考え方の軸”を与えてくれます。
「足りない」の正体は、モノではなく視点だった
インテリアコーディネーターで著者の荒井詩万さんが提示するのは、劇的な変化ではなく、「すでに持っているもの」との関係を見直すという選択。

私も、「何を買い足せば、あか抜けますか?」という相談をいただくことがありますが、実際に足りていないのは“モノ”ではなく、視点や整理の仕方が少し噛み合っていないだけというケースが多いように感じています。
だからこそ本書は、「何かを変えなければ」と焦っている人ほど手に取ってほしい一冊。
今あるものの見え方が変わるだけで、部屋は想像以上に素直に応えてくれます。
専門知識を暮らしの言葉へと翻訳する力

専門的な知見を背景にしながらも親近感ある語り口なのも本書の魅力。
読み手の感覚に寄り添い、ページをめくるたびに「なるほど」と腑に落ちる言葉が用意されています。
そして気づけば思考そのものが整理されていくのです。
それに加えて、とても興味をそそる言い回しも私には印象的でした。
例えば、
・“自分らしさ”はルールのあとにやってくる
・ドアを開けたときに、「まず何が見えるか」ですべての印象が決まる
・“ごちゃごちゃ”と“物足りない”のふたつは、真逆のように見えて、共通点がある
そんな、「どんな理由が隠されているんだろう?」
という仕掛けがたくさん散りばめられています。
また、荒井さんご自身のお仕事を通しての経験談も盛り込まれているので、内容もよりリアルに感じます。
空間の印象を決める「フォーカルポイント」という考え方
コーディネートのポイントとして紹介されるポイントの中でも、特に私が皆さんに読んでもらいたいのが、「フォーカルポイント(注視点)」について解説される部分です。

「フォーカルポイント」は、空間づくりにおいて基本的でありながら重要な言葉のひとつ。
何を、どの位置に、どう配置するかで、それを視覚的に認識する人の心理に大きな影響をもたらします。
この本では、部屋に入った瞬間に視線が留まるフォーカルポイントを自覚的に作り出すことで、空間にメリットを生み出すだけでなく、併せてデメリットも軽減する効果を伝えています。
これは私も強く共感するポイントです。
空間全体を満遍なく整えることってハードルが高いけど、“ここさえ押さえておけば”というポイントを心得るだけでよければ、少し気持ちにも余裕ができますよね。
ルールがあるからこそ、自分らしさは際立つ
「あか抜けた部屋=無機質に構成されたモデルルーム空間」ではありません。
そこに住む人の個性が、ルールという土台に乗ることで美しく整えられた状態を指すのです。
本書は、インテリアのテクニック集であると同時に、部屋との向き合い方そのものを問い直す一冊だと感じています。
何かを足す前に、まず立ち止まり、今あるものの関係性を見直してみる。
その小さな意識の転換が、空間にも気持ちにも確かな変化をもたらしてくれます。
部屋に対する違和感の正体がはっきりしないまま時間だけが過ぎている——
この本が、そんな状況を変える出会いになると嬉しいです。

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